羽虫

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 自販機に近づくとボタンが赤く光っているが、よく見ると文字が書かれている。 「うり、きれ……?」  膝から崩れ落ち、その場から立ち上がれなくなった。いつ入荷されるかもわからない。次第に視界は黒い点に覆われていく。もうSもない。医者も当てにならない。 「くそっ!ふざけやがって!」  私は立ち上がり歩き出した。ここ以外に同じ銘柄のタバコを売っている自販機があるはずだと思ったからだ。   「こんな虫に視界を奪われるなど……あってたまるか」  探し歩いている間にも視界は蠢く羽虫に覆われていく。
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