プールサイドの足跡は、真夏の日差しでも消えない

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「そうしたら、裕奈ちゃんの足は外反母趾って言うのに似てて、それで少しでも楽になればって思って裕奈ちゃんの上履きにいろいろと試してみたりして」  えっ、ちょっと待って。 「それって、中学や高校の時の話?ゴム切ったのも」 「僕」 「変な黒い布貼ったのも」 「僕」 「バカでかいサイズに代わっていたのも」 「僕」  はぁ、全部コイツがやったの。  しかも、全部大迷惑な善意で。  私、いじめられてなんかなかったじゃん。 「バカじゃん。何やってたのよ」  木村君に言ったのか、私自身になのか分からない言葉。 「ほんとごめん。僕、頭悪かったから。高校の時は、裕奈ちゃんと同じ高校の友達に頼んだりして。でも、裕奈ちゃんのためになればって」  コイツ……木村君はずっと私のためにしてくれてたんだ。でも、私は全部嫌がらせだと思ってた。 「言ってくれなきゃ、わかんないよ」 「ごめん」  木村君は、ごめんを連呼して、頭を下げっぱなしだ。 「あっ、じゃあこの靴」 「あの、僕、裕奈ちゃんの足何とかしたくて、それで調べたら義肢装具士(ぎしそうぐし)って資格見つけたんだ。外反母趾の人も歩きやすくなる靴とか作れるんだ」  確か、私の大学には義肢装具士になるための学科がある。 「まる子ちゃんに全部話したら、私に任せろって裕奈ちゃんの足の型を取ってくれて、それで大学の先生に手伝ってもらいながら作ったんだ」  あのギプスか。まる子、謀ったなぁ。ドヤ顔をして外したギプスを持っているまる子の顔が浮かぶ。 「あの、僕、裕奈ちゃんの事、五年生の時からずっと好きです」  はぁぁぁぁぁぁぁぁ  あの時、アンタがみんなの前でちゃんと好きと言ってたら、私はこんなに闇深くなってなかったかもしれないんだぞ。 「五年生の時にちゃんと言え、バカーーーッ」  私は思わず大声で叫んでしまった。
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