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「おい、見ろよ。こっちに化け物の足跡があるぞ」
あれは忘れもしない、小学三年生の夏、学校のプールでの出来事だった。
男子の一人がそう大声をあげると、我先にと他の男子が群がってくる。
「本当だ。スゲ〜」
「俺、こんなの初めて見た」
「俺たちの中に化け物がいるって事か」
「急いで追いかけようぜ」
真夏の日差しが照りつけるプールサイドについた黒い足跡は、あっという間にその姿を消してグレー一色に変わる。
「ちっ、乾いちゃったよ」
「今度はもっと早く呼べよ」
「次は生捕りにしようぜ」
男子たちは、化け物探しに夢中なようだ。
「よーし、じゃあ、泳ぎの確認をするぞ。男子一番から五番はプールに入れ」
先生の指示に従って、五人の男子がプールに入った。プールを横に使って反対側まで泳ぐテストだ。泳ぎ終わると、反対側で並んで座って待つ。
いよいよ私の順番になった。私は水泳教室に通っていたこともあり、一番で反対側につき、プールサイドに上がった。そのまま、前のグループが座っている方にプールサイドを歩き始めた。
「見つけた!」
「化け物発見だ」
私はビックリして、後ろを振り返った。
「おお、化け物がこっち見た」
「食われるぞ」
「佐々木裕奈が化け物だったのか」
えっ、なんで私が化け物なの?
「ちょっと男子。裕奈が可哀想じゃん。化け物とかいうのよしなよ」
女子たちが、私をからかっていると思ったらしく男子を牽制した。
「これ見てみろよ」
「人間じゃねぇよ、だから裕奈は化け物なんだよ」
男子は私の足元を指差した。
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