プールサイドの足跡は、真夏の日差しでも消えない

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 プールから上がった私の足跡、それは、の足跡だった。 「嘘、なにそれ。何で指四本しかないの。気持ち悪っ」  男子を牽制してくれた女子も、私の足跡を見てから、あからさまに引いている。  やがて、真夏の強い日差しによって、化け物と呼ばれた私の足跡は消えてなくなった。  しかし、私の心の中には決して消えない足跡がついた瞬間となった。  私の右足は、外反母趾(がいはんぼし)という足の親指が付け根から人差し指側に寄っている。今では、人差し指の下側に親指が入り込み、人差し指は床につかなくなっている。外科的な処置をしないと治ることはないと聞いているが、今のところ痛みもないし、生活に不自由はないので定期検診で整形外科に行っているだけだ。  プールの一件から数日後、私にあだ名が付けられた。 「おい、ユーマ。お前、血は何色だ?」  男子の一人が、私のことをUMA(ユーマ)と言い始めたのだ。何でも、未確認動物の事で、の私はそれに違いないということらしい。  私の名前が、佐々木裕奈(ささきゆうな)だったことから、と揶揄われ半分で呼ばれているのだ。  そして私は、いじめの対象になった。  オシャレが好きで、人と話すのが好きで、明るい女の子だった私はこの世に存在しなくなり、私は闇に落ち、心の中に残った足跡はより濃くなっていった。  五年生の時、クラスメートの男子に告白された。 「裕奈ちゃんの事が好きなんだ」  すごく久しぶりに学校で裕奈と呼ばれた。告白された事より何より、名前を呼んでもらえた事が嬉しかった。私の心にほんの少しだけ、また光が差した気がした。  でも、それもあっという間に消えた。 「お前、なんでユーマなんか好きなの?」 「あっ、お前もユーマなんじゃねぇの」  クラスの男子が、私の事を好きだと言ってくれた男子を囲んでいた。私なんかに、あんなこと言うから、こんな目にあっちゃうんだよ。 「ちっ、違うよ。かっ、からかってやったんだよ」 「そうだよな」 「ビックリしたよ。悠斗(ゆうと)がユーマの仲間な訳はないよなぁ」  やり取りを見ていた私とその男子の視線が一瞬合い、刹那に視線を外された。  あっそうだったんだ。あれも揶揄われていたんだ。そりゃあ、私なんかに構うからそうなるんだよ。  この出来事から、私はさらに闇を濃く深くし、心の中の足跡は同じように深い闇色に染まっていった。
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