27人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
中学に上がり、高校に上がっても私は闇から這い上がれなかった。中学ではさすがにユーマと呼ぶ人はいなかったけれど、かなり濃く深いところまで落ちて、心の足跡はもう闇と同化しているようだ。
中学では足の甲のところのゴムを切られたり、高校では黒い布を糊で付けられたり、二十八センチと私には巨大な上履きとすり替えられていたりと、私の上履きは常にいたずらをされていた。闇から抜け出せる気もしなかった。
が、そんな私にも転機が訪れた。
大学に入り、実に十年振りの友達ができた。
「裕奈〜、お腹空いたぁ」
「裕奈〜、課題忘れた。写させて!」
「裕奈〜、また振られた〜」
大学では、いつも私の横にはまる子がいた。一年生の時、一人で一般教養の講義を受けていたら、講義の後に声を掛けてきてくれた。
"ねぇ、一人だと寂しいでしょ。友達になろうよ。私、山端まゆ子。でも、太ってるからまる子って呼ばれてるんだ"
まる子は、可愛らしい顔立ちに、白い肌で、背が高く横にも大きい。さながら、映画のベ○マッ○スのようだ。
まる子は本当に明るく、いつも元気だ。学科は違うけれど、そんなまる子とずっと一緒に行動していた影響で、少しずつ濃く深い私の闇にも光が差してきた気がしていた。
「私たち青春を謳歌できていない。何が足りないか分かる?彼氏よ、彼氏。合コンよ、合コンに行くわよ」
まる子のいきなりのこの一言で、私は生まれて初めての合コンに参加することになった。もちろん強制的にだ。
「まる子、私、男子と十年話してない。無理だよ」
「何言ってんの裕奈。あんた、顔可愛いんだから大丈夫よ。私はこの破壊力抜群の胸をアピールしていくわ」
そう言って、両手で胸を押し上げる。確かに大迫力だ。見てるだけでなぜか、お腹いっぱいになる。そして、ヘビー級の胸を凌ぐスーパーヘビー級のお腹。
「ねぇ、まる子は太っている事、コンプレックスじゃないの?」
私は無理。私は化け物の足、UMAと呼ばれた足、心に大きな闇色の足跡が残っている。すごく大きなコンプレックスだ。
最初のコメントを投稿しよう!