プールサイドの足跡は、真夏の日差しでも消えない

6/11

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「はぁ? このダイナマイトな胸だって、ちょっとポッチャリのお腹だって、私の一面でしかないんだから、そんなものだけで人を評価する奴など地獄に落ちればいい」  そう言って豪快に笑うまる子。まる子は、私の足の事を知っている。まる子の家に泊まりにいった時に見られたのだ。  まる子は、理学療法士になるための学科に所属している。だからなのか、私の足を見ても驚くどころか、痛くないかと心配をしてくれた。 "化け物、UMAと言われた私の足を見ても、私を友達だと言ってくれる"  世界で唯一、まる子だけは私のコンプレックスを包み込んでくれる存在なんだと思った。 「あのさ、裕奈。合コンの前に私の練習に付き合ってくれないかな」  何でも、まる子のいる理学療法学科は手や足が不自由な人が動きやすくなるための義肢や装具の勉強もするらしい。その過程で、足にギプスを巻いて型取りをする実技があるそうだ。その練習を私の足でやらせて欲しいらしい。 「ギブス? そんなのバケツに入れた石膏に足を突っ込むだけじゃないの?」 「そんなことしないよ。ギプス包帯っていう、ぬるま湯で湿らせた包帯状のギプスを足に巻きつけていくんだよ。後、ギブスじゃなくてギプスね」  知らなかった。へー、そうやってギプスって作るんだ。っていうか、ギブスじゃないんだ。  数日後、大学からもらってきたというギプス包帯を巻かれ、仕込んでいた凧糸に沿ってナイフでギプスを外された。 「ギプスって熱いんだね。でも、まる子にナイフで足を切られるかと、ドキドキしたよ」  ギプス包帯を巻いてから、乾くまでの時間が化学反応なのか熱かったが、外す作業は、その太い指を器用に使い私の足は無傷で生還した。  そして、無事にまる子の実技が終わった日、私は人生初の合コンに参加することになった。  合コンなんて行ったこともないので、何を着ていけばいいのか分からず、ネットで必死に調べた。私のワードローブで何とかそれなりにコーディネートをしてみた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加