プールサイドの足跡は、真夏の日差しでも消えない

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 駅でまる子と待ち合わせて、二人で電車に乗る。そういえば、合コンという響きにドギマギして、今日の相手を全く聞いていなかったことに気がついた。 「相手? 同じ大学の人。学年も一緒だよ」  同じ大学かぁ。どこかで顔くらい見たことあるかもしれないな。名前を言われても、どうせわからないし。 「まる子、いつもと服装変わらないけれど、良かったの?」 「えっ、変かな。まあ、今日はこれでいいや」  まる子はいつも大学に着て来るような、トレーナーにロングスカートだったので、ネットでコーディネートまで気にしてきた私だけが、気合い入っているようで、少し恥ずかしい。  お店はお洒落な建物のイタリアンのようだ。慣れないお洒落に合わせるための履きなれない靴のせいで、さっきから足が痛くて早く座りたいのが本音だ。 「あっ、ごめん、電話だ。裕奈、先に入ってて。山端で予約してあるから」  まる子はそう言って、携帯電話を手にお店の脇に小走りで行ってしまった。仕方がないので、一人で先にお店に入り、"山端で予約を"、と伝えると店員さんは"お連れさまはもういらしています"と案内しながら言ってきた。  なんですと。  マズイ。まる子がいないと私は会話できる自信はまるでない。  初合コン  単騎突っ込む  闇女  いや、こんな川柳を思い付いてる場合じゃない。 「こちらのお席です」  着いてしまった。何にも考えがまとまらないまま、席に着いてしまった。 「はい、ありがとうございます」  去らないでくれ店員、と思いながら、席の方を見ると男性が一人座っていた。  あれ、男性もまだ一人しか来てないんだ。 「こんにちは」  男性は恥ずかしそうに、私に挨拶をして、着座を促してきた。  この男性も合コン慣れていないのかな、と直感的に感じた。 「こんにちは」  何とか笑顔で返して、テーブルに視線を移すと違和感に包まれた。  セットされたフォークやナイフ。なぜかしか用意されていない。
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