プールサイドの足跡は、真夏の日差しでも消えない

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「話をしてから渡そうと思ったんだけど、先に渡すね。みて」  そう言って渡された箱の中には、お洒落な靴が入っていた。 「履いてみて」  よく分からないけれど、なんとなく流されてその靴を履いてみた。 「あっ、楽……」  靴自体は今履いていたお洒落なヒールと変わらないのに、この靴は足がすごく楽だ。 「どうかな」 「うん。すごく履きやすくて楽」  良かった、と嬉しそうな表情を見せる男性。 「なんで、私にピッタリの靴を作れたの?私の足の事、知らないよね」  私は思っていた疑問をぶつけてみた。今の大学で私の足の事を知っているのは、まる子だけた。 「まる子に聞いたの?」 「いや違う。昔から知ってた」  昔から知ってた?  どういうことだろう。 「僕の事、本当に覚えていない?」  いや、そう言われても……  この顔に見覚えは………………ある。 「もしかして、小学校の時の」 「うん。裕奈ちゃんに好きだって告白したのが僕」  私の頭の中にその時の事、その後の事が瞬時に再生され、涙が滲み始めた。 「また、私をからかって楽しんでるの」  涙が溢れ出て来る。いくつかの涙の雫が、頬を伝って私の口に入ってくる。  塩辛いなぁ。  どうやら、私は怒ってるらしい。もう、頭の中がグチャグチャで自分の感情がよく分からなくなってる。 「あの時は、仲間外れになるのが怖くて。それで……本当にごめん」  そんな事、今更言われたって。 「僕、本当に裕奈ちゃんの事が好きで、足の事、自分なりに調べていたんだ」  私は俯いたまま、なんとなく話を聞いていた。
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