三章

14/32
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
 地上の生物を炙り尽くすような日差しが容赦なく降り注ぐ。朝は休校一歩手前くらいの雨量だったが、昼が過ぎると嘘みたいに晴れてしまったのだ。  下校時刻までギリギリ持ち堪えた俺は、校庭で爽やかな汗を流しているサッカー部に妬ましさを感じつつ、日陰に張り付くように歩いた。  ペットボトルの水を命綱に歩く道は、千里かと錯覚してしまう。たかだか数百グラムだが手に持ったままだと重い。しかしリュックに入れると取り出し辛い。 「あー……ムリ」  一瞬意識が飛んだ。アスファルトに転がるペットボトルを拾い、このまま帰るのは不可能だと悟る。  その場に座り込んでしまおうかと思ったところで、目先のバス停のベンチが空いていることに気付いた。頼むから誰も座らないでくれと祈りながら、鉛のような脚をほとんど気力だけで動かし無心で沈み込む。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!