三章

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「えいすけくん?」  俺の顔に影ができた。最初はそれ程と思っていたが、目鼻の間隔が白佳に似ている。 「あー……マユキちゃん」  俺を覗き込む彼女は水色のランドセルを背負っている。水色が好きなんだろうか。余程俺の顔色が酷いのか、きょとんとしていた表情が険しくなる。 「具合悪いの? 熱中症?」 「その延長線かな。俺、快晴だといつも具合悪くなるんだよ。奇妙な体質だろ」 「へぇー不思議。大丈夫?」  心配してくれるのはありがたいが、正直喋るのも苦しい。 「きゅーきゅう車呼ぶ?」  数年前に本当に呼ばれて運ばれたことがある。ちょうどあの人しか家族がいなくて、迎えに来られたとき散々嫌味を言われた。 「ちょっと座ってればそのうち復活するよ」  真雪ちゃんはしばらくオロオロしていたが、何もできないと悟ったのか、足先を自分が帰る方に向ける。 「わかった。気をつけて帰ってね」  その時、ランドセルを背負った二人組が俺たちを指さした。 「あっ見て妻崎が男の人と話してる」 「本当だー、えんこー?」  キャハハ、と黄色い声が耳を裂く。真雪ちゃんはランドセルの持ち手を握り締め、強く唇を噛んだ。 「あの子達、クラスメイト?」  俺はベンチの手摺りに手を掛ける。 「うん、友達」 「違うだろ。すぐバレる嘘は付かない」  フラフラ歩いて来るからだろう。二人は小馬鹿にした眼をしながら俺を待っていた。
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