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ある夏の日、大志とみはなはでかけることになった。 大志の幼馴染にして腐れ縁の瑞原悦巳は、シングルファーザーの児玉家で家政夫として働いている。 みはなは悦巳の雇用主である、児玉誠一の一人娘だ。 傲岸不遜傍若無人、プライドのかたまりがスーツを着てのし歩くかのごとし父親に似ず素直ないい子で悦巳に溺愛されている。 付け加えるなら、悦巳と誠一は紆余曲折を経て相思相愛の間柄だ。 大志もたびたび児玉家にお邪魔しては、犬も食わないかわりに猫が毛玉として吐き出すレベルの不毛なのろけ話に付き合わされるはめになる。 みはなは何故か大志に懐いており、夏バテ気味で自炊もだるく児玉家にたかりにきた大志は、悦巳と誠一が市販の流しそうめんキットを組み立て終えるまでのあいだ、一人娘のエスコート役に任命されてしまった。 「さて、行きたいとこあるか」 「コンビニでアイス買いたいです」 「あとにしたら?昼飯入んなくなるぜ」 「それじゃ噴水がいいです」 「噴水って公園の?んじゃ着替え持ってかねーと」 「準備万端です」 一旦部屋に引っ込んだみはなが、うさちゃんリュックサックをしょって出てくる。 「抜け目ねえな」 あきれ半分感心半分唸る大志。 「水鉄砲も入ってますよ」 胸を張って威張るみはなの手を引き、玄関先のスニーカーに足を突っ込む。 「いってきます」 「いってらっしゃい、熱中症に気を付けるんすよ。水分はしっかりとって……まあ大志がいるから大丈夫だとは思うけど念のため」 「手を離すな崩れる!」 「やっべ!そだ大志、帰りにめんつゆよろ」 「買い忘れたのかよ」 「昨日スーパー行ったんだけど、みはなちゃんがこれアンディさんそっくりですって持ってきたじゃがいものインパクトで吹っ飛んじまった」 「親ばか家政夫、略してばかせいふだな」 「なんだって?」 「なんでもねえよ、共同作業ファイト」 ウォータースライダーの模型と首っこきで格闘中の悦巳の隣で、今にも空中分解しそうな樋と柱を踏ん張って支え続ける誠一。 痴話喧嘩すら楽しげなお似合いカップルに手を振って、さっさとドアを開ける。
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