18 決別

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 励ましたけれど、しばらく戻れそうにないのか、八木沢さんは沈んでいた。 「その上、瑞生様が結婚したからと、ジジイが調子に乗って見合いの写真を送りつけてきやがる……」  黒いオーラがにじみ出し、瑞生さんがフォローした。 「ああみえて、直真を心配しているんだろう」 「心配? ありえませんね。ただの嫌がらせですよ」 「俺も直真には、幸せになって穏やかに暮らしてほしいと願っているからな?」 「出向している間は、絶対幸せにはなれないんじゃないですかね」  ネガティブな八木沢さんほど、たちの悪いものはないと知った。 「でも、沖重の社員の幸せは守られましたから!」 「犠牲の上にね」  八木沢さんはさりげなく付け加えた。 「本当にありがとうございました。八木沢さんという犠牲がありましたけど、父たちも生活していけそうですし、私もこれで安心しました」  「そうか。美桜の幸せが俺の幸せだ。美桜が幸せなら、それでいい」 「幸せですよ」     八木沢さんはそれなら仕方ないですねと。小さく呟いた。   「直真。沖重を頼むぞ」 「お任せください」  瑞生さんに答えた八木沢さんは、もういつもの八木沢さんに戻っていた。   「もしかしたら、八木沢さんに新しい出会いがあるかもしれませんよ」  八木沢さんは私の言葉に曖昧な笑みで返し、否定はしなかったけれど、あの顔は少し前の私の顔と同じ。 『そんな日は来ない』  ――そう思っていた。  でも、私が瑞生さんと出会えたように、八木沢さんにも自分を変える出会いがあることを祈っている。  その願いを込め、私はチョコレートをひとつ、八木沢さんの皿にのせたのだった。  
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