19 別荘

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 秋になり、公園の桜の木の葉が色づき、赤や黄色の葉を頭上に降らせた。  眠っている瑞生さんの髪に落ちた葉を指でそっとつまむ。  起こさないよう落ち葉を取ったつもりだったのに、瑞生さんは目を開けて、私の顔を見て微笑んだ。 「起こしてしまいましたね」 「いい。美桜の指だとわかるから」  秋の空に変わった空は、青みが薄くなっていた。  その空を見上げ、瑞生さんは言った。   「美桜。別荘へ行かないか?」 「別荘ですか?」  私が驚いたのは、瑞生さんが別荘を持っていることではなく、スケジュール的なものだった。 「そうだ。三日ほどなら休める……と思う」 「三日ですか? 私としては、瑞生さんにあまり無理をしてほしくないんですけど」  八木沢さんに代わって、瑞生さんの秘書を任された私は、スケジュールをすべて把握している。  スケジュール管理と来客の対応、パーティーへの出席、役員との食事、取引先からのお誘いと、瑞生さんの仕事は、次から次へと増え、尽きることがない。  休む暇がないくらい忙しいと、私が一番知っている。  でも、瑞生さんは公園で食べるお昼の休憩だけは欠かさなかった。
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