19 別荘

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「元々あった別荘ではないんですか?」 「ああ」   別荘は煙突付きの煉瓦作りの建物で、木製の窓、庭には子供用の古いブランコと砂場。  それから、別荘のそばには大きな桜の木があった。  自然に私の目から涙がこぼれた―― 「懐かしい気がします……」   「そうか」 「瑞生さん。もしかして、この別荘は……」 「ここは美桜の母親が所有していたものだ。美桜が継いだ財産の中に含まれていた」 「売却しないでくれたんですね」  瑞生さんは悪い顔をし、私の顎を掴む。  その顔は『宮ノ入』の瑞生さんだった。 「すべて取り返すと約束したからな」    唇に軽いキスをして、瑞生さんは私の手を引いた。 「中へ入ろう」  ――やっぱり懐かしい。  入った瞬間、おぼろげな思い出が甦る。  居間の暖炉前で座る母の姿。  病弱な人で、活動的ではなかったけど、幼い私のそばにいてくれた。  忘れていたのに、ここにいると、母を思い出すことができた。 「私……。この家にいたことがあったかもしれません……」 「近所の別荘の所有者で、美桜たちのことを覚えている人もいたぞ」 「やっぱり……。母とここで過ごしていたんですね」
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