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「美桜の母親は、小さい頃から病弱で、この別荘を特に気に入っていたらしい。美桜を産んだ後は、亡くなるまでここにいた。とても幸せそうにしていたそうだ」
「幸せそうに……」
私は母を不幸にしてしまったと思っていた。
ずっと――
とても静かだった。
遠くで鳴く鳥の声が聞こえるほどに。
「それから、リフォーム業者がこれを見つけた」
瑞生さんは木の箱に入っていた写真をとりだした。
女性と赤ちゃんが写っている。
写真の裏面には『美桜三ヶ月』と書いてあった。
他にも私の幼い頃の写真が残っている。
「写真は全部、捨てられてなくなったと思っていました」
「屋根裏部屋に気づいていなかったらしいな。そこに美桜が使っていたベビーベッドやおもちゃと服も大事にとってあったぞ」
また涙がこぼれた。
私が愛されていた証拠。
お前のせいで母が死んだと聞かされていた私にとって、どれだけ心の救いになったかわからない。
「瑞生さん。ありがとうございます。今、見つかって、本当によかった……」
「今?」
「昨日、病院へ行ったら、妊娠していることがわかったんです」
そっとお腹を手で包み込む。
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