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瑞生さんが驚いて、私を見る。
「どっちだ!?」
「まだわからないですよ」
「そうか。でも、どっちでもいいな」
瑞生さんは嬉しそうに頬を緩ませた。
「家族が増えるんだ」
「そうです。私たちの家族です」
瑞生さんはそっと背後から、私を宝物のように抱き締めた。
外の景色が見え、大きな桜の木から、葉が舞い落ちる。
次から次へ降り積もり、落ち葉は地面を隠す。
幸せな思い出が増えるたび、過去の悲しみも苦しみも覆い隠してくれる――降りやまない落ち葉のように。
【了】
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