1 妹にきたお見合い話

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 女子大を卒業した梨沙は、父が経営する沖重グループに入社した。  宮ノ入グループとも取引があり、ちらりと耳にした噂話によると―― 『わがままな社長令嬢が沖重に入社した』 『社内の雰囲気が悪くなった』  ――と、あまりよくない評判だった。  もちろん、私が沖重グループの社長の娘とは、誰も気づいていない。  地味な姿に暗い性格。  梨沙と私が似ていないのもあるけれど、沖重の苗字を名乗っていても、人事でさえ、気づいていなかった……  二人が沖重の社員について、文句を言っている間に、グラタンが焼き上がった。   焼けたグラタンやサラダ、バケットをダイニングへ運び、並べる。  継母が好きなワインを用意して、綺麗に並び終えたら、静かに私はキッチンに戻った。  私の食事はキッチンで食べるように言われていて、キッチンの隅にある丸椅子に座り、一人で夕食を食べる。  しんっとした私一人のキッチンに対して、ダイニングのほうは賑やかだ。  明るい声と楽しそうな雰囲気で、帰ってきた父親と継母、梨沙は食事をし、私はそれを眺めながらの食事。  これが、毎日続いている。    ――別世界みたい。
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