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誕生日プレゼント
それから何度か食事に行き、呑みに行き、いろんな話をしたけど、期待は裏切られなかった。
僕は会うたびに彼女に惹かれていき、早く弟から恋人へ昇格したいと思い始めていた。
人を好きになるのに、理屈っていらないんだな、と思う。
僕は彼女のどこが好きなのか、分からない。
あえていうならそれは、彼女そのものが好きで、彼女のいる空間が好きで、彼女といられる時間が好きだ。
彼女がいきいきとしていられるように、周りにあるいろんなことを、良い方向に向けてあげたい。
それは自己犠牲とかそういうことではなく、守るべき誰かがいて、その人も自分を求めてくれている、と実感できることが嬉しいのだ。
でも彼女は、すでにひとりの自分を確立していて、プライベートで誰かを欲する、ということがないようだった。
僕が寄っていけば、拒否はしない。
一緒にいることは、楽しんでくれている。
それは僕が、彼女の大事にしたい距離感を守っているからだ。
そのことは嫌ではなかったけど、他の誰かに、彼女を持っていかれるようなことだけは嫌だった。
そしてこの先、彼女が誰か他の人に惹かれて、その人と僕以上の関係を作りたい、と思われるのも嫌だった。
彼女は自分の38という年齢を意識してか、あなたも早く良い人を見つけなさい、とか言っているけど、人と人との関係なんて、いつ何が起こるか、どう変化するか分からない。
僕らの出会いが、それを実証している。
この先も彼女と僕の関係を保っていくためには、早くステップアップしていかないと。
そして、彼女には僕という人がいる、ということを周りの人に分からせるためには、その先までいかないといけない。
それは堂々と、彼女が人のものであることを示すための証を付けてもらうこと。
そう、指輪だ。
僕は、彼女とふたりで会うようになって3ヶ月ほどで、結婚を意識するようになった。
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