デート…?

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食べ終わって店を出ると、彼女が化粧室に寄る、と言ったので、僕はエレベーターホールの辺りで待っていることにした。 スマホを出して、さっきのアプリを開けてみると、あの後も続けて来ていた。 中途採用で一緒に入った、二つ下の女性からだ。 うちの社は、入社後一年ほど、あちこちの部署に入って、さまざまな業務を体験させる。 それで、本人の希望と部署の空き具合を調整して配属が決まるのだ。 彼女とは、そういう訳でしばらく一緒に行動していたので、気安い同僚の一人だった。お互い、中途採用だった、ということもある。 研修で久しぶりに会って、一緒に夕飯を食べていた。 その時、どうやら彼女は僕に何かを感じたらしい。そう言えば、別れるとき、チラリと目の色が動いたような気もする。 文面を見て、少し考える。それで思い切って通話ボタンを押した。 相手はすぐに繋がった。 最初のメッセージが「無事に帰れた?」というようなものだったので、 研修お疲れさま、無事に帰り着いたよ、と言った後、 「悪いけど、僕には大事にしたい人がいる。だから期待しないで欲しい」 相手が、それはどういう人? 会社の人?と食い下がるのにかぶせるように 「僕には彼女しか見えないんだ。だから連絡を待たれても困る」 また研修とかで会うかもしれないけど、今まで通り同僚で、と言って通話を切る。 振り返ると、絢さんがすぐ傍にいた。 彼女は、ほらね、あなたなら可愛い人がすぐに見つかるわ、みたいな顔をしてた。 ちょうどエレベーターが着いて、扉が開いたので、黙ったままふたり、そこへ乗り込む。 自然にドアの方を向いて、隣に並んだ時、僕は行動を起こした。 彼女の頭の後ろに手をあてて、その唇を唇で塞いだ。 直前の彼女の驚いた目に、心の中ではちょっとした、やってやった感。 地下の駐車場に着いて扉が開くと、僕は顔を離して彼女の肩を抱いたまま、エレベーターを降りた。 誰もいないエレベーターホールで、僕は彼女の小さな身体を抱きしめた。 「まだ、あなたしか見えてないから」 彼女はされるがままになっている。 「なんなら、この先までやって証明しようか?」 そう言うと彼女は、僕の胸のところでふふふっと笑った。 「分かった。何も言わないから」 顔を上げてそう言うと、彼女は僕の胸元に顔を寄せた。 「もっと早く、こうすれば良かった。あなたがその気になるのを待ってたら、余計にチャンスが遠のくってことに気づいてなかった。もう遠慮はしない」 さあ、帰ろう、送っていくよ、と僕は言って、彼女の手を取って車へと向かった。 それからは、ふたりでいるときは自然に手を繋いだり、腕を組んだりするようになった。 …まあ、たまにはキスくらいも。
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