可愛い人

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キッチンのテーブルで、いつものように向かい合って夕ご飯を食べる。 カラーを差した長い花瓶の横に、マグカップに水を入れ、切り取った大根の葉の株を挿したものが置かれていた。 数日経って、大根の葉が伸びて広がってきたら、細かく切って味噌汁の薬味に入れるのだ。 彼女のお母さんが、いつもやっていたらしい。 今日のメニューは、ご飯と薄く輪切りにした大根と豆腐、鶏肉のあっさり味の煮物、スーパーにテナント出店していた餃子専門店の大きな餃子。 試食して「たまにはこういうのもいいね」と言いつつ買った物だ。 自分の使った食器をそれぞれで洗い、鍋やフライパンを片付けた。 交代で風呂に入り、寝る支度をしてベッドルームに行くと、彼女はベッドに潜り込んで、さっきのイラスト集をめくっていた。 毛布を持ち上げて、その横に滑り込む。 「犬か猫だったら、千紘くんはどっち派? 飼いやすいのは猫だけど」 その本に出てくる家には、犬と猫も描かれていたのだ。 「僕は断然、犬派」 「このマンションはペット可だけど、私は自分のことだけで精一杯だからな」 そう言ってちょっと残念そうな彼女に、僕は言った。 「犬を飼おうよ。僕は子どもの頃から生き物の世話は好きだから、多分大丈夫。絢さんの他に一匹くらい増えても」 「ちょっと、それはどういう意味?」 あはは、と僕は笑って 「このふたりみたいに、お茶したり、旅行したり、楽しいことをいっぱいしよう。犬か猫も飼おう?」 そう言うと、彼女の頬にチュッとキスをした。 こっちを向いた彼女の、今度は唇にキスをして 「今朝の続き、しよう?」 イラスト集をさりげなく閉じて、彼女を仰向けにする。 「嫌?」 なんとなく、とまどっているような彼女に 「さっき買ってきた」と枕の下に忍ばせておいた避妊具を見せる。 「ずっと仲良しでいたいから」 そう言って、彼女の表情を見る。 「無理強いはしないよ。嫌なら言って?」 彼女は僕の首に両腕を回した。 「嫌じゃない。私のことを、こんなに大事に思ってくれる千紘くんに、出会えたことが嬉しくて」 僕はそこまで聞くと、もう我慢ができなくなって、彼女の唇を塞いだ。 朝の勢いはまるで他人だったかのように、大事に大事に甘く、彼女の身体を抱いた。
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