1082人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、彼女の言うように2回セミナーをやって、その都度、僕はアンケート結果を持ってオフィスを訪ねた。
2回目の時、彼女の提案のように3回目の座談会をやることを伝え、日程をどうしようか、ということになった。
壁に掛かっていたカレンダーを振り返って
「あ、まだ捲ってなかった」
月が変ったのに、前月のままになっている。
立っていって、カレンダーの下の両端を持ち壁のフックから浮かすと、下に降ろした。
遠くから見ても分かる、数字の大きな、大判のカレンダーだ。
捲ったカレンダーをたわませて持ち、上部の穴をフックに引っかけようとしている。
馴れているらしいけど、なかなか穴に入らなくて、ちょっと笑っている。
「あ、掛かった。すみません」
そう言って笑いながら席に戻ると、
「第2週のどこかなら、大丈夫かと思います」
カレンダーとスケジュール帳を交互に見ながらそう言った。
僕はなんだか微笑ましくて、きっと笑ってたと思う。
その雰囲気のまま、候補日を決めると、コーヒーをごちそうになった。
前のコーヒーとはちょっと味が違う。どうやらかなりのコーヒー好きらしい。
「向井さんはこちらのご出身ですか?」
僕は少しずつ探りを入れる。
「いえ、うちの両親は転勤族なので。ここは高校時代を過ごしたところなんです。
その後、大学に行ったので、また違うところで。でも、就職するなら適度な都会のこの辺りがいいな、と思って」
「そうなんですか、どちらの高校ですか?」
彼女は、丘の中腹にある高校の名前を挙げる。
「永井さんは、こちらですか?」
「そうです、地元で」
中学と高校の名前を挙げると、
「あ、それなら高校は弟と同じです」
「弟さんは、何年生まれですか?」
そう聞いてみる。この範囲なら失礼にならないはず。
「それなら、僕の先輩ですね、ふたつ上だ。僕が1年の時、3年になる」
「わ、そんなに年が離れているのね、私と」
彼女はそう言って笑った。少なくとも3つは上、ということだ。
「永井さん、年より若く見られませんか?」
「そうなんです、童顔なんで」
顎が細く、目が丸い。実は髭も比較的薄いので、学生のような顔だ、とよく言われる。
「33よね」
年齢のことだ。
「僕にも姉がいます。4つ上の」
「そうなんだ、でも私、もっと上ですよ」
やだなぁ、と身体を椅子の背にもたせかける。
「だから、最初に会ったとき、あまり緊張せずに済んだのかも。そういうことにしておきます」
そういって、彼女は笑った。
最初のコメントを投稿しよう!