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「皆んなで帰ろう。蒼汰もお母さんのホテルで休憩なんかしないで家に彼女を連れて来い」
蒼汰はふふっと笑った。
「分かった。でも雪のせいでイタリアンを食べられなかったから日曜日は出掛けるよ。そうだ、お母さんとお父さんにも奢ろうか?お父さんにはビールも奢ってやる」
私は涙が溢れそうになった。彼女が出来て大人になったんだな。私もいい加減に子離れしたほうが良さそうだ。これからは夫と仲良く喧嘩せずに暮らして行こう。
「お母さん、泣いてるの?まだ勘違いしてる?」
「ううん、蒼汰を疑ってゴメンね」
蒼汰は頬をあげて笑顔になった。
「内緒にしてた僕が悪いんだよ。でもどうして春香さんと僕だって分かったの?シティホテルを出たとき、慎重に辺りを見たんだけど」
私は笑った。
「だってチェスターコートは春香さんだったし、Sの字の足あと。蒼汰だってすぐに分かったよ」
「ああ、そうか」
蒼汰はうんうんと頷いて傘の雪を落とした。私は下を見て可笑しくなった。彼女に会ったらこの話をしてみよう。
終わり
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