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また自転車に跨ってスーパーに向かう。風が少し弱くなった。桜の木が川沿いに並んでいる。春になったら蒼汰とお花見しようか。お弁当を作ってあげたい。
食材を籠に入れてレジに並ぶ。新しいバイトの子がモタモタとバーコードを読み取っている。私は自分がパートを始めたときを思い出した。二十代の先輩に色々教えてもらったっけ。今は五年働いているからプロだけど最初はあたふたした。
家に帰ってジャガイモの皮を剥く。中学生の頃から野菜の皮は剥けるようになった。ケーキを始めて作ったのも中学生のときだ。蒼汰も料理が出来る子をお嫁さんにしたほうがいいと思う。でも女と蒼汰が寝てる姿を想像するとゾッとする。
カレーを煮込んでいる間にお風呂のお湯を出す。冬はゆっくり浸かりたい。お風呂に入っているときは幸せだ。
キッチンへ戻って野菜が煮えるのを待つ。夫が声を掛けて来た。
「ビールを飲むから枝豆を用意してくれよ」
そうだった。私は冷凍庫から枝豆を出す。鍋に水を入れて火にかける。隣の家のキッチンの灯りがついた。浮気していても家事はきちんとやっているようだ。洗濯物も早い時間に干されている。
「はい、飲みすぎないでね」
私はビールを夫に渡した。夫の目元は緩む。よっぽど飲みたかったんだろう。朝は二日酔いだったくせによく飲めるな。でも酔った夫は屈託がなくて楽しい。私は飲めないから羨ましい。
「枝豆はもうすぐ茹で上がるからね」
「ああ、ビールが進むよ。お腹がますます出るな」
夫は三十代からメタボリックになった。でもガリガリよりはいい。私は微笑んだ。
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