打上花火とソウルフード

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「次の仕事が見つかるまで」と答えはしたものの、次の仕事を見つけるのはそう簡単なことじゃなかった。だってまず時間がないんだ。 あのね、秘密組織には労働基準法なんてものは関係ないの。早朝出社して、帰宅できる日には深夜に帰宅する。 フロアの床で寝てしまうことなんてよくあって、そういう時には大体朝起きた時に、殺人現場宜しく体の周りがテープで囲まれているのに気づくことになる。なんていうんだっけ、チョーク・アウトライン?そういう悪戯が好きな人たちがいるんだよね。 そうやって朝飛び起きた死体たちは洗面所に駆けこんで歯を磨いて、またデスクに戻って仕事を始めるんだ。 ほんとうにね、やばい職場だったよ。 ちなみに、職場にはスーツとパンプスで通っていたんだけどね、自分のデスクにつくやいなや、パンプスは脱ぎ捨ててスニーカーに履き替えていたね。 いつでも走って逃げられるように。
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