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 「よ〜!仁、飯行こうぜ〜」  午前の講義が終わった途端、友人が俺の背中を叩く。  「おー、ちょっと待ってろ」  俺はスマホを机の上に置き、ノート類を鞄の中へしまう。  「・・・お前、またそんなサイト見てんの?」  友人の怪訝そうな声に顔を上げると、彼は眉をひそめながら俺のスマホを覗き込んでいた。  「人のスマホを勝手に見るな、デリカシー無いのはモテないぞ。」  「お前が無用心なだけじゃね?てかそんな鬱サイト見て楽しいのか?」  友人が“鬱サイト”と言った俺が見ていたサイトは自己嫌悪で溢れた人達が自分のコンプレックスをひたすら吐き出しているサイトだった。  「まあ、楽しい訳じゃ無いな、ちょっと気になる事があっただけ」  「気になる?まさか弱ってる女子なら落とせるんじゃないかとか考えたの?」  俺は友人の肩にグーパンをお見舞いしてやった。  「んな訳あるか!コンプレックスってのは、主観的なもんだろ?それを客観的に見せたらどうなんのかなーって思い付いたんだよ。」  友人は大袈裟に肩を庇いなから瞬きをした。  「へー、お前面白いこと考えるな。で、このサイトを実験材料にしようと?」  「実験ならもうした。」  「まじ?どんな風に?あと結果は?」  友人の以外な食い付きに、俺は食堂までの道のりで実験の話をする事にした。  サイトの中から1人を選び、そのコンプレックスを聞き出した後、しばらくしてから自分のコンプレックスと偽りその人自身のコンプレックスについて意見を求めるというのが今回の実験内容だった。結果、彼女は自身のコンプレックスが過大評価であった事に気が付いたのだ。  「へぇ〜。あれか、1人に言われた悪口を自分の中で繰り返し考えてるせいで皆に言われたと思い込んじゃうやつみたいな?」  「まあ、そんな所だな。」  「その子は、気付いた後なんか変わったのか?まだチャットしてる?」  「いや、もう繋がるのはやめた。それに向こうも最近サイト内では見かけない。」  「ふーん、コンプレックス克服できたのかもな。それならハッピーエンドでお前はその子の恩人になるんだろうな。」  友人はシシシと笑って見せる。  「別に、その子のコンプレックスを解消してあげたかった訳じゃないさ。俺は俺の興味を検証したかっただけ。実験用モルモットだった ってとこだな。」  ニヤリと笑う俺に対して、友人の顔は引き攣っていた。    「いや絶対お前の方がモテねーわ。」
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