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 引きこもりになってからしばらくの事、彼女はサイト上である1人の人物と特に親くなった。  Jと名乗るその人物は彼女のコメントに1番良く共感してくれたし、チャットでの会話も良く弾んだ。  ある日、Jはオンラインで良いから会わないかと彼女を誘った。  年齢も性別も分からない人と会うなんて、普段の彼女には考えられない事だった。しかし、今の彼女は他人に共感してもらう事に飢えていたし、Jの事はそれなりに信用していたので顔を隠す事で承諾した。  約束した日、彼女はマスクにサングラスを身につけ、長い髪は全て帽子の中に納めた。これで外見で特定される事は無い。Jもまた、カメラには胸元しか映さず、それに加えて声も何かで変えているようで性別の判断が出来ないようにしていた。  チャットでは無い会話はやはり緊張した。しかし、Jはチャットの時と変わらず親しみやすく彼女の緊張はすぐに解れた。  話題はもちろん、自分のコンプレックスについてだった。  いつもは彼女がコンプレックスを語り、Jが聞き手に徹する事がほとんどであったが、その日は珍しくJが自分のコンプレックスを語りたいと言って来た。彼女はそれを心良く承諾した。  Jは自分のコンプレックスをひたすら挙げていった。そして生きるのが辛い、でも死ぬのも怖いと板挟みの苦しさを語った。  Jのコンプレックスは全て外見の話であったり、昔他人から言われ傷ついた事を引きずっているものがほとんどだった。  彼女は少しだけ拍子抜けをした。自分のコンプレックスに比べたら大した事が無いと思ったのだ。  「なぁんだ、Jのコンプレックスは気にする必要の無い物ばかりじゃん。」  思わず彼女はそう言った。  「・・・・そうかな?」  「そうだよ、ただの気にし過ぎだよ。」  「・・・じゃあ、君のも、コンプレックスなんかじゃ無いね。」  「え、、、?」  Jが微かに笑った。  「だって、今話したコンプレックスは、全部君が前に話していた事だもの。」  
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