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夕立
「あーまいったー、夕立かー」
学校の帰り、短髪の女子高生は古本屋で雨宿りしていた。そこにはもう一人の男子高生もどうやら雨宿りのようだ。
「こまったな〜、これは······うわっ!」
ゴロゴロッ、ガゴンッと雷が鳴り雨も激しくなって2人は思わず店内へ避難した。
「いらっしゃいまひ〜、なににいたしましょうか」
お年老いたおばあちゃん店長、
「「いや、別に······ん?」」
「あ、どうも」
「え、こちらこそどうも」
言葉が重なりあい2人はつい互いを見る。すると男の子は、
「夕立って嫌ですよね」
「うん、ホントッ、迷惑っていうか〜あハハッ」
苦笑い。話しかけてきた男の子としばらく待っていると夕立はおさまり2人は自宅へと帰っていった······。
その次の日、
また学校の帰りに夕立が、昨日よりも2時間ばかり早く終わったというのにと愚痴をこぼす女子高生、
「あ〜も〜最悪〜、あたし運ワルッ」
家に帰って好きな事もしたいと古本屋を過ぎて走っていく。鞄を傘のようにして走るがほとんど意味がないほどに強く降ってくる雨風、そのせいか、
キューグルルルルゥーッ、
ハッとしてとたんお腹が痛くなる。どうやらお腹を冷やしたようだ。
「イヤー、どうしよどうしよどうしよぉぉーっ!」
頭にはトイレトイレトイレと連呼されたが、運よくコンビニに駆け込みトイレに俊足で入った。
「――あ〜、体冷やしちゃダメって監督が言ってたっけ」
幸せそうな表情でお腹をスリスリしながらコンビニを出ようとして顔をあげると入口に高校生が、あの人も大変だっただろうなと思いきや、
「あ、あの人たしか昨日の」
「今日も夕立、これだからこの季節は」と独り言を喋りながら右回りのコンビニのため右を向いたら、
「ん? あ、君は昨日の」
「ははっ、今日も雨宿りですか?」
「うん、ついてないですよね」
「あ、うん、そうだね」腹痛でコンビニに駆け込んだとは言えない。2人は仕方なくコンビニのイートインで待機することにした。
――男子高生は外の雨風を窓越しで観ていた。だが女子校生は黙っているのが気まずいと、
「あなた、西高でしょ」
声がして慌てて振り向く。
「う、うん、君は東高?」
そうそうと次の言葉がお互いに出ず、かえってなんとも言えない重い雰囲気になってしまう。このままではと男子高生は、
「き、君はとても、なんていうか、ボーイッシュな髪型だね」
「え、髪型」と言いながら右手で髪の毛を触る。すると少したって、
「ちょっとっ、それどういう意味よっ、女が短髪じゃ悪いわけっ!」
「ええー、いやそんなつもりで言ったんじゃあ〜」
「これだから最近の男は!」
怒らせてしまったと思ったら、
「あたしバスケやってんの、だから」
プイッと目を閉じて右に顔を向きながらちょっと恥ずかしそうに言う。
「バスケって、ハハッなっとく」
笑顔になる彼、しかしすかさず、
「あんたはっ」
「え?」
「『え?』じゃない、あんたの部活は? なにしてんのよ」
「別に」
「はあ?」
「なんの部活にも入ってないんだ、僕」
「な〜んだつまんない、やると楽しいのに」
帰宅部の連中と同じかと思ったが、彼の目は何やら訳でもありそうと直感する。
「なんかわけでも」
「あ、止んだみたいだよ」
さっきまでの勢いはどこへいったのかと言いたくなるくらいに外は晴れていく。
「じゃ、行こう」
「あ、うん」
2人がコンビニを出たとき彼から、
「そうだ君、名前なんて言うの?」
「なまえ? あたしは優杏、君は?」
「僕は夏里太」
「じゃあね、夏里太君」
「うん、じゃあね、優杏さん」
優杏はすぐ走りさるその背中はどんどん豆粒のように小さくなってあっという間に見えなくなる。さすがバスケ部だと感心しながら彼女とは反対を向いて帰っていった······。
偶然が重なった2人、このあとも夕立になるたびにどうしてか再開することになっていく······。
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