◇酔い

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 翌朝。  頭痛で目が覚めた。  何時…… 6時か――――……。  ……えーと……オレ、昨日どうやって……。  うわー。……なんも覚えてないけど。  ……寛人ごめん……。  起き上がって確認すると、下に着てたTシャツと、下着しか身に着けてない。 帰ってきてズボンとかは脱いだのかな……。あーもう、ほんと覚えてない。  そのまま立ち上がって、リビングに入ると、スマホがテーブルに置いてある。  開くと、寛人からのメッセージ。 「これ見てるの、朝か?おぶったの、4回目だからな。もう今度奢れ。仁にお前の事任せて、今電車乗ったとこ。朝お前を起こすように仁に頼んだから。次は、ワインは禁止」  と入ってた。  ……あ、やっぱり、また連れて帰ってくれたのか。  ごめん、寛人。  まだ早いので、メッセージは送らず。心の中で謝りつつ。  バスルームに向かう。  頭痛いし、風呂入ってないし、歯も磨いてないし、最悪。  仁にも迷惑かけちゃったな……。オレちゃんと自分でベッド行けてたらいいんだけど……。  次から、マジで、気を付けよう……。  シャワーを浴びて、少しすっきりして、そのまま歯を磨く。  冷たい水を流し込んで、ソファに腰かけて。  やっと、落ち着いた。  ――――……完全に飲み過ぎた……。  ワイン飲みだして…… グラスでって言われたのに、美味しかったワインを、ボトルで頼んで……途中から全然記憶ないし。  ほんと、寛人ごめん……。  ぼーー、と、天井を見上げてると。  遠くで、ドアが開く音がして。  少しして、仁が、現れた。 「――――……おはよ」 「仁、ごめん、昨日。 ……迷惑かけた、よね?」 「――――……別に、平気」  ……あれ?  ……えーと…… ――――……。  なんか、無表情。  彰の方には来ずに、洗面台に消えた。  コーヒー、淹れようかな……。  ご機嫌取りじゃないけど。   少なからず迷惑かけてそうだし。  コーヒーをセットして淹れていると。  仁が、隣にやってきて、コーヒーのカップを出してくれた。 「……起きれたんだね。無理だと思ってた」 「――――……うん。頭痛くて起きた」 「……ふうん」  そのまま少し黙る仁。 「パン焼く? 彰食べれる?」 「……オレコーヒーだけでいいや……」 「……わかった」  ……なんか、機嫌、悪いよね、やっぱり。  ――――……笑顔が、無い。 「……昨日、オレ、どうやって帰ってきた? 部屋までどうやって……」 「片桐さんがおぶってきた。で、オレは、肩貸してベッドに座らせた。水持ってくるって冷蔵庫いってる間に、シャツとか以外全部脱ぎ捨てて、ベッド入って寝出してたから、スマホはテーブルに置いて、脱いだ服は洗濯機につっこんだ」 「――――……あー……と……ごめん……」 「……飲むといつもああなんの?」 「……いつもじゃないけど……」  他の人と飲んでも、ならないけど。  寛人と飲むと、ああなる確率が高い。  安心しすぎだよな……愚痴ってる間にああなる。 「……あんなんなるなら、酒飲まない方がいいんじゃない? セーブしたら?」 「……うん。 気を付ける」  淹れ終わったコーヒー。 「……オレ、カフェオレにする。仁は?」 「ブラックでいい」 「ん」  ……やっぱり、機嫌、良くない、のかな。  だらしなさすぎて、呆れた? 「――――……いただきます」  テーブルについて食事を始める仁を、少し気にしながら。  ミルクを温めて、カフェオレにする。  立ったまま、一口飲みこむ。  優しい味に、ほっと息をついてると。 「……塾、大丈夫なの、そんなんで」 「――――……大丈夫。シャワー浴びてすっきりしたし」  それきり、仁は何も言わない。  なんで、こんなに機嫌悪いんだろ。  さっきの話だと、肩借りたのと、服を片付けさせた位で…… 吐いたとか、そこまでひどい事はしてそうにないんだけどな。  機嫌悪いのかな……なんだろ……。  怒ってるわけじゃなさそうなんだけど……。   「オレ、さっき言ってた以外に、なんか迷惑かけた?」 「……何で?」 「……なんか仁、機嫌、悪くない?」 「……悪くないよ」  そう言われてしまうと、もう聞けないし。  ……でも、いつもの笑顔ないし、声、低いし。言葉短いし。  絶対いつもと違うのは分かるんだけど。  悪くない、と言ってるんだから、その内、良くなるかな……。  カフェオレが少し苦い。  ……気がする。 「――――……塾の用意してくるね」  少し残して流しにカップを置いて。  彰は、部屋に戻った。 (2021/4/3)    
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