謎のジジイ

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謎のジジイ

「おや これまた珍しい」 まったく見覚えのない ジジイが 居間から 出てきた 「あんた 誰だよ ここ 俺の家だぞ」 俺は スマホを片手に準備し 場合によっては すぐにでも 警察を呼ぼう と 思った 「まあ お入りなさい 寒いでしょう」 ジジイは まるで自分の家みたいに そう言った 居間に入ると  灯油ストーブが赤々と燃えている 親が使っていた家具や雑貨は まるで そのままのようだ 俺は 居間のソファーではなく その奥の食堂の 食卓テーブルの椅子に腰かけて 「おい インスタントでいいからコーヒーくらい出せ!」 と 言った ジジイは  「ブレンドでいいですか?カフェラテもできますよ」 と言うので 「ブレンドでいい ブラックでいいからな」 と 俺が答えると 最新式のコーヒーメーカーの ボタンを押して コーヒーを出した 「懐かしいなあ このマグカップ」 とりあえず コーヒーを一口すする 「ところで あんた誰?」 俺は あらためて ジジイの顔を よーく見たが やはり記憶にない ジジイはテーブルの向かいに座り 「いや 誰っていわれてもなあ」 と 薄笑いを浮かべている 「ここに いつから住んでるんだ?」 「おまえが生まれる前からさ」 「はぁ?俺が生まれる前からって ふざけんじゃねぇ!」 ジジイは すぐ横の食器棚から 俺の好きな『マル〇イバターサンド』を 二袋 取り出して 「克彦 これ好きだったろう まあ食え」 と言った 俺の名前まで知っていやがる 好きなお菓子まで こんなジジイ 親戚にいたろうか? オヤジの両親も おふくろの両親も とっくに他界している
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