貧乏神

1/1

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

貧乏神

ジジイは まじまじと俺の顔を見て 「克彦も苦労したんだな いくつになった?」 などと まるで親戚みたいな 親身なセリフを吐きやがった 「俺のことは どうでもいい おまえは誰なんだ? まず一番先に おまえの名前だ それから年齢 なぜ ここにいるのか! この三つ 早く答えろ」 俺は 少し強い調子で言った ジジイは軽くため息をつき 「やれやれ まあ 克彦がワシを知らないのも無理はない 何しろ おまえが子どもの頃は ワシは天井裏に こっそり棲みついておったでな」 などと意味不明なことを言った ジジイは俺の(から)になったマグカップに  もう一度コーヒーを入れて 炊飯器のスイッチを押してから 落ち着いた調子で こう語った 「ワシにゃぁ 名前なんかない まあ あえて名乗るならだ 年齢はワシも知らん 気がついた時から こんな年寄りだったでな なぜここにいるのか って言われてもなあ ずう~っと昔から ここにいたのは ワシの方だ そこに家を建てたのが 克彦の父さんだ ワシの方が聞きたいくらいだ なぜここに家を建てたのかって ま お互い そんな訳だから 仲良くやりましょうや」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加