まいった

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まいった

どうしたものか 考えながら 家に帰ると 地元の高校の制服を着た 女子高生が なぜか食卓テーブルの ジジイの席に座って  お茶漬けを かき込んでいた 「キャッ 帰ってきちゃった!」 と 彼女は俺の顔を見て 黄色い声を上げ ケラケラと笑った ジジイの姿は 見当たらない 「誰だ おまえ! こんな夜中に 何してんだ?」 俺は 疲れてるし ジジイに相談したいこともあったので 不機嫌に そう叫んだ 「や~だ~ もう そんな怖い顔しないでぇ」 と 彼女は半分笑ったまま俺をにらみ また 何事もなかったかのように座り込み お茶漬けを 食い続けた 「じいちゃん どこ行ったんだ?」 と 俺が聞いても 知らんぷり ざざざっと お茶漬けを最後まで食べてから 「お腹空いてんでしょ ご飯 食べなよ」 と 彼女は言った 「おい どういうことだ?おまえ誰だよ?」 「佐藤ジャスミン あんたの嫁候補」 「冗談じゃねぇ ジャスミンだか何だか知らんが おまえみたいなガキ 俺が相手にすると思うか? 俺 来月の誕生日で40だぜ 女子高生とか家に連れ込んでる時点で犯罪者だろ 早く家に帰れ もう11時になる 家で心配して警察に相談してるかもしれないぞ」 「や~だ~ 克彦ぉ 真面目なフリしちゃって 毎晩ネットでエロ動画見て がんばってるくせに いいから もう 私のことは気にしないで! さっさとご飯食べて お風呂入って寝なさい」 「はあぁ? おい 言わせておけば調子にノリやがって こうなったら俺が先に110番通報してやる こっちが犯罪者と誤解されても困るからな ・・・ったく 最近の高校生は こましゃくれてやがる」 俺がスマホで 110番通報しようとすると 彼女は 俺の手にしがみつき 「やめて! 説明するから」 と 真剣な目で 俺を見た どこか 見覚えのある目つき やや? まさか? 「やっと気がついた? そうよ 貧乏神よ」 彼女は 二ヤリ と 微笑んで 俺の手からスマホをひったくり テーブルに置くと 「ずーっと頑張ってたから 霊力が高まって ここに棲みついて781年目にして やっと念願の若い身体を手に入れたの」 などと ほざきやがった 「信じられっかよ? そんなデタラメ よく 恥ずかしげもなく・・」 俺が途中まで言いかけると 彼女は 「まあ座れや 克彦 おまえは今夜 和田副店長から引き抜きの話を持ち掛けられて それでなくても落ち着かないところへ こんな女子高生が登場したら まあ イライラするのもわかるぞ」 と 言った 「だがな ワシの方の事情も待ったなしでな 自分の望み通りの身体が突如として手に入ったのじゃ ワシは愛する克彦のために それはもう一心不乱に努力を重ねておったが その努力が実って 夕方 夕食の材料を買いに町まで出かけた時 スーパーの休憩コーナーでソフトクリームを食べてる女子高生がおってな 『ああ ワシがもし あんな若い女の子だったら克彦も喜ぶだろうになあ 何の因果で こんなジジイの姿なんだろう』と思いながら 壁際の椅子に腰かけて ため息をついた・・・ しばらくぼんやり座っていると 疲れていたのか いつの間にか眠ってしまったんじゃ すると夢に天照大神(あまてらすおおみかみ)が現れてのう おまえは真面目に頑張っているから望みを叶えて進ぜよう と仰せられ 目覚めたら どういう訳か こんな姿になっておったと そういう訳なんじゃ!  あっはははははっ  さあ だ・か・ら もう ジジイの話し方はや~めた っと! ねっ! 克彦も ジジイと二人で暮らすより アタシと二人の方が楽しいでしょ 前 言ってたじゃん 可愛いカノジョ欲しいって!」 俺は 正直 ちょっと恐怖を感じた ジジイが貧乏神だと言い張るから まあ  そういうことにしておいてやろう とは 思っていたが 正真正銘の貧乏神であるとは たった一瞬でも  信じたことはなかった そりゃそうだろう? ファンタジー映画でもあるまいし どこの世界に 貧乏神の存在を 信じる奴がいるというんだ! 「それにしても ジャスミンって?」 俺は そう言って ため息をついた 「アタシ『アラジン』のお姫様 ジャスミンが好きなの 知らないか 克彦は ディズニーには珍しいアラブ系ヒロインよ」 「知るか! 俺のために若い女になったなら 俺の好きな名前つけさせろ」 「ダ~メ! アタシはジャスミンがいいの」
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