神さまには かないません

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神さまには かないません

次の朝 ジャスミンは ジジイと同じように ってか 本体はジジイと同じなんだけど 俺が目覚めたら  しっかり朝食の支度をしていた 「おはよう 克彦 ねえ ちょっとお願いがあるんだけど・・・ 和田副店長も辞めちゃうことだし 克彦の店で私も働けないかな?」 ジャスミンは そう言った 「働くって? おまえ そもそも 戸籍とかあるの?」 「その辺は 心配しなくて平気 これでも神の端くれ バカにしないでよ それにね 和田副店長の話 すぐ断りなさい そもそも私 この土地の神だから旭川とか行けないの しかも克彦 これ以上働いたら 体壊すわ 私は どんな事をしても 克彦を幸せにしたいの そのための この体よ」 俺は  ジャスミンの威圧に気おされ 和田副店長の誘いは 朝一で 丁重にお断りした 結局 ジャスミンは 俺の妻として  同じ店で働くことになった 勝手に そういう戸籍を作り 店長に 取り入ったのだ ジャスミンは  明るく元気に バリバリ働き さすがに長く生きてきただけあって 機転が利き 人の心を読み まさに痒い所に手が届くような 神業的(苦笑)な働きぶりで あっという間に 店長に信頼され 3年後には  俺の上司 副店長に のし上がった 「1日の労働時間は8時間以内 週休2日を厳守させます やむを得ない残業は 必ず副店長の許可を得ること」 副店長に就任した挨拶で ジャスミンは 堂々と  そう宣言した ジジイが ジャスミンに変身して 約一年間  ジャスミンの本性は ジジイなのだ  という 先入観を捨てられず その体に 触れる気は起きなかった だが 二人で暮らしているうち 自然体で いつのまにか ジャスミンは 内実共に 俺の妻 に なっていた ジャスミンは  フォークリフトの免許を取得し 大雪が降ると  早朝から除雪作業に出かけた 休日に フォークリフト作業の要請があると ジャスミンが率先して 出勤し 俺を休ませた ジャスミンは 明るく 若く 美しく 優しく たくましく 頼りがいがあり 色っぽく かわいい  申し分のない妻だった ジャスミンと 二人で暮らしていれば それだけで 幸せで  無理して働き過ぎることはない 健康第一だ という あの時の 貧乏神の言葉を 実に 素直に  受け止められる気がした  なのに ジジイの言葉には 反発を感じ ジャスミンの言葉になら  素直にうなずくことができるとは 人間なんて ちょろいもんだな! きっと ジャスミンは そう 思ってる 俺は 時々 懐かしく 思い出す ジャスミンが ジジイだった日々 それはそれで  平和で あたたかかった 雪の日  ジャスミンの足あとを見ると 不安になる 不安で 不安で たまらなくなる もしジャスミンがいなくなったら 俺は もう  一人で生きられそうもないからだ 「ありがと 克彦は 真面目で 臆病で 素朴で 貧乏神の最高の伴侶よ 大丈夫 死ぬまでずっと 離れないから 安心して」 ジャスミンは 毎晩 そう言って キスしてくれる 金で 幸せは 買えない ああ 貧乏神を  こんなに 愛してしまうなんて    完
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