オリオンによろしく

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オリオンによろしく

 小さい頃から、キラキラする綺麗なものが好きだった。  海や花、星空や、奇抜な色の生き物、ステンドグラスとか万華鏡も、本当に好きだ。透明な鉱物やガラスビーズ、トンボ玉から飛び出す絵本まで、気に入ったものを飽かず眺めている時間だけは、嫌な事をすべて忘れる事が出来た。  でも、それを声を大にして好きだと云う事は殆どない。  俺のコレクションを見せた時、羨望(せんぼう)の眼差しを向けていた友達も、中学に入ったら「へぇ!まだ集めてんだ!」と笑うようになった。なんだか自分だけが酷く子供っぽい事をしている様な気がして恥ずかしくなり、以来其のコレクションは俺にとって人目を(はばか)る負の秘密事項となって今に至る。  今日大掃除をしていたら、棚の奥からそんな俺の秘密のコレクションBOXが出てきた。   こんなとこにしまってたっけ……。  記憶より少し錆びたBOXを覗く。  瓶詰めのガラスビーズ  透明のおはじき  紫水晶  小さな万華鏡  外国のコイン いま見ても、とても綺麗だと思った。  でも  其れに触れる俺の手はまるで、宝石を盗もうとするゴブリンの様にゴツゴツとして醜い。其れを見る度この胸には、言葉にし難い深い哀しみが込み上げてくる。 『綺麗』と『哀しさ』はいつも俺の中、どうしようもなくひとつなのだ。  冬の空を見上げて、メロペを追いかけるオリオンを想う。  永遠に届かないこの片想いを、空駆けるあの星とわかちあうとき  俺は少しだけオリオンが好きになる。
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