あの雲の向こう側

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あの雲の向こう側

ああ 今頃あの雲の向こう側で どれだけの星が流れているのだろう 流星群の夜 しんとした寒さに肩を(すく)めながら 一人で空を見上げた 考えていたら少しだけ 妬ましい気分に(さいな)まれた 俺の頭上に雲がかかる事に 理由なんかないはずなのに ああ 嫌だな これだから駄目なんだ 俺は うまくいかないことばかり考えてしまう 恵まれているすべてのことは数えたことすらないのだから そろそろ神様だってうんざりするに決まってる 空の雲は俺に忖度(そんたく)もせず また更に拡がった ……もういいか 寝よう どうせこんなもんだ ため息で結露したマフラーを口から離して深呼吸したら 雲と雲の切れ間の空を真っ直ぐ南の地平線に向かって 一筋の星が落ちていった 人生に諦めがつかないのはこんな時だ 幸せは 少しづつ あの星は誰に落ちたのだろう
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