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-火-
浅生 真也(あそう まや)
渦河 徹(うずかわ てつ)
浅生真也は最近、同級生の女子がストーカー被害に遭っていると相談を受けた。そこで独自の策略でなんとかストーカーを捕まえたところ、その犯人は浅生のクラスメイトで、しかも何故か惚れられてしまった。
付き合ってくれたらもう二度とストーカーなんかしない。付き合ってくれなかったらいろんな子のいろんな情報をバラす。なんて。半ば脅迫されて付き合いだしたわけだ。無論、浅生の方に恋愛感情など皆無である。それどころかストーカーなど軽蔑の対象だ。クラスメイトとして悪い奴では無いと思っていたが、今やそれすらも怪しい。好感度はマイナスからゼロ。プラスにはまずならなかった。
渦河徹には自覚がある。自分がストーカーであるという自覚が。でも、大切な人のことは何でも知っていたいというのは自然の摂理じゃないだろうか。渦河徹は知りたいだけなのだ。知りたい。全部知りたい。誰も知らないことまで自分だけは知っておきたい。ただ、それだけなのだ。
「浅生くん浅生くん、これプレゼント。俺から。家で開けて」
「は?何なんだよ急に」
「なんでもないよ。でも俺、浅生くんが困るのは嫌だから」
そう言って渦河はさっさと帰って行ってしまった。家で開けてと言われたのだから家で開ける方がいいのだろう。しかし気になる。気になるというよりもはや怪しがる。不審がる。浅生はこれから部活だ。家に帰るのは二時間後ほど。それまで気になりっぱなしというのも良くないだろう。トイレの個室で開封した。
「電池…?」
箱の中にはコロンと、単三電池が一本。
「は……?」
意味が分からない。開けたところで意味が分からなかった。電池をつまみ上げる。いたって普通の単三電池である。
「ぁ、リモコン…!」
昨日のことだ。なんとなく部屋を片付けていたら、机の上に置いてあったテレビのリモコンを落としてしまった。その表紙に電池が一つ何処かへいってしまったのだ。その後いろいろと探してみたが結局見つからないままだった。
寒気がする。浅生は田舎からのお上りで一人暮らし。昨日のことなど誰かが知ってるわけがない。つまりだ。渦河にストーキングされている、と。そういうことになる。
家を突き止められていることまでは知っていた。この間突然押しかけて来たからだ。窓から覗いていた?三階だぞ。一番考えられる最悪な理由。監視カメラがあるのか…?
「お前、俺の部屋に何を仕掛けてんだ?」
「あれ、えっと…どれがバレた?」
「カメラでもあんじゃねぇのかよ」
「ああ、そっちか。うん、浅生くんに何かあったら、すぐに分かるようにさ」
「カメラだけじゃねぇのか…いい加減にしてくれ!気色悪いことすんなよ!さっさと全部外せ」
「なんで?」
「は、な、なんでって…」
「不公平だって言うんなら俺の家のカメラ観て良いよ」
「あーもーそういう問題じゃねぇんだよ!!そもそも見られてんのが不快だっつってんの!場所教えろ全部ぶっ壊してやるから」
「…嫌だよ。何言われても曲げないから。俺は浅生くんに勝手にどっかに行かれちゃ困るんだもん」
気持ちが悪い。気持ちが悪い。どこまで見られている?何を考えている?分からない。気持ちが悪い。というかそんなもの、いつセットしたんだ。浅生は渦河をものすごく警戒している。家にあげたことなどあるはずが無い。じゃあいつだ。気持ちが悪い。
「渦河。お前言ってたよな。俺が困るのは嫌だってよ」
「うん。すごく嫌だ」
「じゃあやめてくれ。困るんだよ…カメラとか」
「……分かった。今度はバレないようにする」
「そういう問題じゃ」
「ごめんね。浅生くん。でも俺は本気で、浅生くんが大事なんだ。俺のものにならないなら殺すとか、そういうの絶対無いから。それだけは安心してて」
まるで先が見えない。出来るだけ辛く当たってるはずだ。何で嫌われない。まったくもって、お先真っ暗である。
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