榛名の嘘

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 別に態度が冷たいわけではない。榛名は、クラスでも中心にいる人物だし、いつも笑顔で、嫌な態度は一つもしない。とても朗らかで、優しい女の人だ。冷たいのは、体温の方だ。榛名は、らしい。  嫌らしい意味では無い。断じて違う。男の俺が言うと、嫌らしいニュアンスに捉えれられてしまうと思うが、全くそんな気持ちは無い。榛名は単純に、手先が冷たいのだ。所謂、末端冷え性。それも極度の。榛名が言うには、足先も異常に冷たいらしい。  一度、漢方を飲んで直そうとしたことがあるらしい。だが、漢方を正しく毎日飲んで、1袋飲み切っても、末端冷え性は治らなかったそうだ。お風呂に入っても、冷たいのは収まらず、まだ冷え切っている。カイロを握っても、多少暖かくはなるが、しばらく握っていないとすぐに冷たくなる。しかもそのしばらくの時間も、2、3分だ。まさに、極度のである。  俺は末端冷え性でも、冷え性でもなんでもないから、榛名の気持ちはよく分からない。だが、極寒の冬に指先と足先が冷たかったら、それはそれは大変だろう。実際、本当に寒そうだ。いくらヒートアイランド現象である東京の高校に通っていても、体は温かくはならない。
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