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情けない話だが、首から出血しているせいか、全く力が入らない。
辛うじて意識を保つだけで精一杯。それでも何かあった時の為に、今気を失う訳にはいかない……先生だけではなく、編集長や警部の為にも。
ベルベットは片腕を切り落とすという荒事をしても、その力は全く衰えているようには見えなかった。既に再生しているとは言え、銀の毒を喰らって大量の出血もしていた。普通の狼人間だったら、とっくに死んでいてもおかしくないのに。
オォォォォォォォ‼︎
そこにアイオネルが突っ込んできた。
彼の体にも無数の傷跡がついていたが、それを気にもせず先生に体当たり。
先生の体は簡単に吹き飛び、石の床に叩きつけられる。アイオネルがここに来たということは、既に編集長と警部は……
いや違う。
編集長も警部もまだ立っている。勿論無傷ではないが、戦えないほどの傷ではなさそうだ。ということは、アイオネルはあの二人を置いてでも、ベルベットの加勢に来たということか?
「二人で相手してくれるのかい。人気者は参っちゃうな」
「そう言っていられるのも今の内ですわ……」
言葉とは裏腹に、先生はアイオネルに掴まれている状態。
そのまま何度も壁に、床に。打ち付けられる度に、ごきっ、ぼきっと耳を塞ぎたくなる音が響く。骨を折らせるどころではない。体の限界を超えている。
「貴女は必ず始末しませんと……」
「そりゃ嬉しいねぇ……もっと構ってくれよ……」
口から血を吐きながら、先生はにやりと笑った。
アイオネルに踏みつけられて動けない先生を、ベルベットが見下ろす。
そして血よりも赤い爪で、先生の顔を……顔の中心を抉るように貫いた。
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