【6】解決と獣

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 アンジュの案内のままに「病院」に行くと、そこは僕の思う病院ではなかった。  街の郊外。大きな提灯と墨で記された看板の文字。それから周辺に立ち込める、甘ったるい香り……おいおい。ヤウの香木屋じゃないか。 「よくこんな傷で生きてましたなぁ。薬とか色々足りんわ」 「追加で用意しようか? 後で払ってくれれば、いくらでも持ってくるよ」 「それは構いませんな。この子達に払って貰いますから」  そして何故か店の中にいるアラン。  にやにやと面白そうに僕を見つめながら、紙にペンを走らせている。 「あの、僕は病院に行くつもりだったんですが……」 「その傷で行ったらあれこれ聞かれますがな。坊っちゃんはともかく、狼の嬢ちゃんは面倒なことになるでしょなぁ」 「大丈夫だよ。ヤウは闇医者やってたから、ちゃんと治してくれるさ」  全然安心できない。  よく見たら巻いてある包帯は蜘蛛の糸だし、天井からは三郎太がじっと見下ろして来ている。治療と称して毒物を入れられていないか、体を怪物に改造されるのではないか。ありもしない嫌な予感が止まらない。 「アンジュ、よくこの人達のこと知ってたね……」 「あんたが話してたでしょ。正体隠せる人、探すの大変だったんだからね? 」  事件のことを、あれこれアンジュに伝えておいて良かった。  仮にも一般人な訳だから、あまり危険に巻き込みたくはなかった。何があったか分からないけど、燃え盛る屋敷の中に入って僕を助けてくれた……    そうだ、先生達は? 「あぁラピス達ね。あっちは残念だけど」  え。
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