【6】解決と獣

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「……何やってるんですか」 「残念だけど」なんて言われたから、良くても一人。悪くて全滅したかと思っていたら、連れて来られたのは店の二階、恐らくヤウの住処。 「遅かったね。悪いけど君の分はもう無いよ」  ぺろりと舌なめずりしながら、先生はこちらを見た。  一緒に座っているのは警部と編集長。それからヴァルツ号。彼らの前にはテーブルが置かれ、上には空になった皿が山積みになっている。 「こいつ、いつもこんなに喰ってるのか? いくら何でも常人じゃ……いや、あんたぁ常人じゃ無かったんだよな」  警部とヴァルツ号は、揃ってぽかんと口を開けている。  聞くと運びこまれた先生は、自らの再生能力で傷を粗方治すと「食事を用意してくれ」と頼み込んだらしい。  そこでアンジュが料理を、アランが代わりに支払いをして用意した一食分は、彼らの目の前で吸い込まれるように完食。もっともっとと頼まれるままに運んだ結果、テーブルの上は皿で完全に埋め尽くされてしまったそうだ。 「頼めば食事が出てくるってのはいいねぇ。ライカ君も何か食べるかい」 「簡単に言うんじゃねえ。アランのことだから、お前が食った分は全部請求されるぞ。ちゃんと払えるんだろうな」 「平気平気。後で払うから」  編集長の追求を軽くいなし、先生はふわぁと欠伸した。   「えっと、あれ全部でお幾らです……? 」 「はい」  僕に突き出された紙には、途方もない桁の数字。  先生の本を数千……いや、数万冊売ってようやく返せる金額。 「誰かが起きてたら止められたのにねぇ。編集長も警部さんも、ラピスより大分後に意識を取り戻したから……残念でした」  ニヤニヤしているアランと、満腹でご満悦な先生。  取り敢えず命があって良かったが、それとは別の問題が発生してしまった。 「ごめん、あたしも止めようと思ったんだけど……先生が切なそうに頼んでくるし、ぶっちゃけうちの売り上げにも繋がるからさ……」 「ま、皆が無事ならいいよ……」  一先ずはそれで納得するしかないようだ。  それより僕は、アンジュに聞いておきたいことがあった。 「教えてくれるかな。僕が気絶している間、何があったのか」 「……分かった」  アンジュは小さく息をすると、ゆっくりと口を開いた。
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