【6】解決と獣

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 アンジュから何があったのかを聞いた僕達は。いや。正確には僕だけは「とにかく体を治すように」と、ヤウに部屋の中に入れられた。  まさかあれだけの傷を負っても、シャンデリアを落下させて屋敷ごとこちらを道連れにしようとするとは。執念というかなんというか、とんでもない存在だ。  僕達を心配したアンジュが、僕達の話から推測して屋敷に来たのは幸運だった。燃え盛る屋敷の中から僕達をなんとか運び出し、ここに連れてきてくれたのも幸運……もはや奇跡とも言っていいだろう。  警部も暫くは復帰できないみたいだし、編集長も先生も仕事どころではなかった。もう警部には、先生の正体も僕達のことも知られているが……多分警察にこのことを話される心配はないと思う。そう信じたい。  ハッハッハッハッ。  人間である僕達は、各々体が不調だったけれど、先生とヴァルツ号は意外とすぐに完治した。何故かヴァルツ号は僕の部屋に度々侵入し、「構ってくれ」と言わんばかりに戯れついてきた。  仮にも普通の犬なのに、あの極限状態を潜り抜けたのは逞しいと言わざるを得ない。アイオネルに噛み付いたり、気を逸らしたりと、随分と大活躍したものだ……銀の弾丸を撃つことしか能のない僕とは大違い。  ハッハッハッハッ。  しかしまぁ、気絶している間によく傷が治ったものだ。ぶっ飛ばされて気絶した編集長と警部。元から人外じみた治癒能力を持つ先生とは違い、僕はただの一般人。気絶していた時間がどのくらいかは分からないけれど、気を失うほどの出血がそんなにすぐに治るものだろうか。  アンジュが「応急処置はした」と言っていたけれど、それが良かったのか。はたまた実はそんなに深い傷ではなくて、僕が勝手に気絶しただけなのか。  ハッハッハッハッ。  今ひとつ納得がいかないことを残しつつも、僕はヴァルツ号を撫でた。  まだ体は万全な状態ではない。早く治して復帰しないと。  余計なことを考えるのは……その後でもいいだろう。
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