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昼を過ぎると、再び先生がやって来た。
全身の傷はすっかり塞がり、血に濡れていた爪や口も綺麗になっている。あれだけ瀕死の状態になっても、時間を置けばここまで治るとは……やはり先生は人間とは違うんだなぁと、否応なしに思い知らされる。
「それで先生、どういった御用で? 」
「おいおいライカ君。しらばっくれようとしても無駄だぞ」
先生はるんるんと楽しそうに僕の肩を掴む。
「この事件が始まる時に言ってただろ。『終わったらご馳走する』って」
そういえばそんな話をした覚えもある。
あの時はジャッケルさんの所に行きたがらない先生を、無理やり動かすために言ったようなもの。適当に流してもいいかと考えていたけれど、あれだけの大活躍をしたのだ。少しは先生を労ってもいい、いやするべきだろう。
「分かりました。でもあんまり高いものは駄目ですよ? 医療費だの食費だの、色々と支払いが重なってますから」
「わぁい、その言葉を待ってたよ。むふふ、前から狙ってた店が幾つかあってね。どこに連れて行って貰おうかな……」
僕が奢ることは覚えていても、「屋台の焼き鳥で我慢」と言ったことは忘れたらしい。
まぁ先生が何と言っても、今の僕に払えるのはそれが限界だ。きっと駄々をこねるだろうけど、無理なものは無理なんだから仕方ない。
「おぅお二人。どっか行くならついでだ。ジャッケルの所に報告して来い」
「えぇ嫌だよ。また尻尾触られるよ」
「結果報告までが仕事ですよ。行かないなら奢りは無しです」
「ライカ君の意地悪。人でなし。狼人間」
縁起でもないことを言わないで欲しいが。
結局僕は先生を引き摺り、再びジャッケルさんの待つカジノへと足を運ぶのであった。
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