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月が照らす草原に、暗い影が集まってきた。
最初はひとつ。次第にふたつ。騒めく草の上には、やがて六の影が現れる。
「何かと思えば、また奴のことかよ……」
「ベルベットが死んだってのは本当かな? 」
「それは嘘……本当だったらここに来てない……」
月は満月には程遠く、しかし静かに輝いている。
「何か弁明があるのでは? 混血の雑種に負けるなど『群れ』の恥晒しかと 」
「そう咎めるでない。時にはそのような事もあろう」
集まった六の中心に、そよそよと夜霧が流れてきた。
それは次第に実体を持ち、二本の腕、二本の足。所謂「人」の形を作る。
ーーやぁ皆。よく来てくれたねーー
夜空にきんと突き刺すような声がして、六つの影は一斉に動きを止めた。
影の中心に立つそれは、一見するとただの青年だった。銀色の美しい髪に灰色の服。瞳は鮮やかな金色に輝き、夜闇の中でもはっきりと存在感を示している。
ーー知っての通り、ベルベットがやられた。やったのはかの有名人、ラピス・ヌックス……改めて言わなくても知っていたかなーー
青年は影を見渡して、そっと口を開いた。
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