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ーーそこで君達へのお願いだーー
青年は辛うじて聞き取れるような、それでいて深みのある声で呟く。
ーー誰でもいい。ラピス・ヌックスを捕らえて連れてきてよ。体はどれだけ傷ついていてもいいけど、殺しちゃ駄目だ。生きて捕らえるんだよーー
青年の声を聞くと、六つの影はざわざわと動き始めた。
それは獲物を見つけた獣の騒めき。血に飢えた者達の咆哮。
ーーそう慌てないで。誰がやってもいいんだ。一番乗りだからって、特別何がある訳じゃないさ。好きにやってよーー
青年は静かに微笑むと、頭上に輝く月を眺めた。
満月を僅かに過ぎたばかりの、真球からやや崩れた形。そこから降り注ぐ青白い光は、草原に立つ影達を怪しく照らす。
ーーさぁ『群れ』の皆。街に出発だーー
夜空に突き抜けるように遠吠えが響くと、獣達は一斉に駆け出した。
瞳を鈍く輝かせ、牙をがちがちと鳴らし、目指すは一つの獲物のみ。
六つの影が草原を抜け、煌びやかな街へ忍び込んだその後ーー
青年もまた、その姿を消していた。
ーー続くーー
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