【1】カジノと予感

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【1】カジノと予感

「ライカ。ちょっと来い」  編集長に呼び出される時は二つのパターン。どちらも碌な話じゃない。  一つ目は、いつも締め切りギリギリの人気作家の原稿回収について。これは期限がまだあるし、説得すればどうにかなるからまだ良い。  問題は二つ目、文字通り「命がけの仕事」。こちらの方が重要といえばそうなのだが、正直少ない方が嬉しい。むしろあったらあったで困る。 「ラピスの原稿の締め切りは、次の土曜日だったよな? 」 「は、はいっ」  よかった。今日は原稿の話か。  ここ数ヶ月、満月の夜になっても怪しい気配がなかった。お陰で安心して眠れたので、普段よりも仕事が捗るのだ。  願わくば、この日々が永遠に続くことを祈りたいものだが…… 「よしっ。それじゃあ今夜、久々に怪しい噂を耳にしたから行ってくれ」  (ライカ・フィクト)の安眠生活が崩壊していくのがはっきりと分かった。  これで次の満月まで、殆ど徹夜かもしれない。まぁ「相方」の方は、夜でもなんでも元気だからいいんだけど……
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