第七章 SPY

34/35
前へ
/210ページ
次へ
「えーっと。 てことは、あーちゃん、勘違いして青井にやきもち焼いてたってことか」 私の渾身の右が入った鳩尾をさすりながら、ニヤニヤした孝太郎さんが私の顔を覗き込む。 「う…うるさいっ」 「青井、男なのに? 勘違いしちゃった?」 「もう知らないっ!」 私は、頬を膨らませてプイッと顔を背ける。 結局、サプライズを仕掛けようと孝太郎さんに内緒で大阪に来たのに、勝手に勘違いして孝太郎さんの浮気を疑って逃げ出し、飲み屋で酔い潰れて知らない人の善意に助けられたのはいいけど、スマホの充電が切れたせいで行方不明騒動を引き起こし、皆に心配をかけた…ってことは、冷静に考えて、やっぱり私の一人相撲? 確かに、孝太郎さんからの『電話に出られないかもしれない』ってRINEメッセージに、『同僚の青井とゲームしてるから…』って一言付け加えてくれていれば、勘違いに気づいてかな? まあそれは無いか。 私はあの時点で完全に青井さんは女性だと思い込んでたわけだし。 じゃあ男性だったから良かったかというと、実は、それはそれで少しモヤッてることもある。 最近職場でも頻繁に研修があるけど、最近は性的マイノリティの方のことを『LGBT』に『Q 』と『+』を加えて『LGBTQ+』と呼ぶらしいけど、青井さんは本当はどうなんだろう。 孝太郎さんは、ただ単にフェミニンコーデの好きな童顔美男子だって言ってるけど、青井さんの本心はどうかは分からない。 でも、駅で二人に出会った時に見た、孝太郎さんを見上げる彼の目は、まさに恋する乙女のように、キラキラ輝いていた。 統計では13人に1人の割合で『LGBTQ +』の人が存在するってことらしい。 私の同僚で、私に恋愛感情を持ってくれている翠ちゃんのこともあるし、青井さんもそんな気がする。 って思いっきり私の勘だけど。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加