第七章 SPY

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「そっか…。 そのやりとり、見てたんだ。 てか、何を勘違いしてるか知らんけど、アオイって、男だぞ? 青井颯太(あおいそうた)、ウチの銀行の後輩。 歳は25か26だったかな? 俺のいる法人向けクレジットカード推進部門に去年中途採用で入ってきたシステム開発のエンジニア。 ちょっとナヨッてるけど、正真正銘のオトコ」 「えっ、私のライバルは男の娘(おとこのこ)なの? てことは、孝ちゃんが攻めで、アオイさんが受け…。いやまて、その逆もアリか…」 「おーいあーちゃん、帰ってこーい! 青井は銀行のエンジニアになる前は普通にIT業界にいたから、俺らみたいなプロパー(生え抜き)の銀行員と違ってお洒落さんだし、彼も見た目が童顔だし、中性的なファッションを好んで着てるだけで、普段からあんな感じ。 疑うならここに呼ぼうか?この寮の602号室にいるから。 あ、あいつも今日は彼女とデートだって言ってたから、もう部屋にいないかもしれないけどな」 「へっ?そうなの?」 なんと、アオイさんは名前ではなくて名字で、中性的な美しさと可愛らしさを兼ね備えた男性だったらしい。 「あーちゃんも知ってると思うけど、ジョニーズのRay!Wa!JUMPってグループに伊能(いのう)って子がいんじゃん。 彼みたいな感じかな?青井も自分が伊能に似てるって自覚してるみたいだし」 「あ、待って?じゃあその伊能くんと今度3ぴーするってこと? 私、まだ心の準備が…」 「あーちゃん何言ってんの?」 中性的な童顔美男子と聞いて思わず動揺して変なことを口走ってしまい、孝太郎さんに冷静に突っ込まれる。 「いやいや失敬。孝太郎くん、忘れてくれたまえ」
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