第七章 SPY

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「今からでも三人プレイしたいなら、コントローラーその棚のどこかにもう一つあるし、青井、本当に呼ぼうか?」 ---コントローラー? 「あ。あーちゃん、もしかして…」 コントローラーと聞いた私がキョトンとしていると、私の挙動不審さに気づいた孝太郎さんが、合点がいったかのように笑いだした。 「三人プレイって、もしかしてあーちゃん、エッチなことと勘違いしてた? 俺ただ単に、この前買ったニンキョードーステッチを三人でやろうって言っただけなんだけど?」 「は?かかか勘違いなんて、そ、そそそんなわけ無いじゃん! あ、でも…、でもさ、あの時もさっきも“縛る”って言ってたのはなんなの?」 恥ずかしさで顔から火が出そうになりながら、無駄だと思いながらも私も反撃を試みる。 「ゲーム内で、チートスキルや武器の使用を制限して遊ぶことを“縛りプレイ”って言うんだよ。 ほら、プレイヤーのレベルが違うと楽しく戦えないでしょ? 分かりやすく言ったら“ハンデ”かな? あーちゃん、ゲームソフトの“ゴーハン”って知ってる?“ゴーストハンター” 俺、この前それのバージョンⅥを買ったんだけど、青井がもうクリアしたっていうんで、この前から一緒にプレイしながら教えてもらってたんだ。 青井にはチートスキルを使わせないっていう“縛り”をかけてね」 「もーーーう!なんでそんな勘違いしそうな言い方ばっかりするのよ」 「いや、全部あーちゃんが勝手に勘違いしてただけだし…」 孝太郎さんが言い終わる前に、私の渾身の右ストレートが彼の鳩尾に炸裂した。
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