第八章 三人の親

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私とお母さんを捨てた木田さんだけど、木田さんにとって実の子供は私だけ。 バツ2になって寂しかったのか、それとも本当に反省したのか…。 私もまだ子供だったから詳しい理由は聞かされてないけど、私が中学生になった頃から、木田さんと私の面会が始まった。 私は初めの頃、木田さんとの面会日が来るのが嫌だった。 というか、木田さんのことが好きとか嫌いとかじゃなくて、木田さんとの面会日前後に決まってお母さんの機嫌が悪くなるのが嫌だったんだ。 でも、木田さんと面会を重ねるたび、私自身は気を許していった。 しばらく離れていたとはいえ、やっぱり血の繋がった父。 高橋のお父さんとも違う親近感から、徐々に親しくなった。 もちろん、お父さんと比較してって訳じゃない。お父さんはお父さん。木田さんさ木田さんって、心の中でそれぞれが独立して存在してた。 多分同世代の女の子の中で、中高生の頃の私とお父さんとの距離感は近い方だったと思うし。 私の反抗期が、ほぼ全てお母さんに向けられていた、その反動かもしれない。 そんな中迎えた高校三年生の秋。 その当時付き合ってた彼氏、本田詩音とのことでお母さんと喧嘩して、私がプチ家出をしたことがあった。 その時私が頼ったのが木田さんだった。 家を飛び出して街を彷徨う私を、電話する声の後ろの街の雑踏の音をヒントに探し出し、木田さんは優しく受け止めてくれた。 でも「帰りたくないから泊めて」と言う私を頑なに拒み、私にちゃんと家に帰ってお母さんと仲直りするよう諭してくれたんだ。 まあその日は結局、他の人ん所に泊まったんだけどね。
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