第八章 三人の親

6/14
前へ
/210ページ
次へ
そんな複雑な人間関係だから、結婚報告も本当なら私と孝太郎さんの二人だけで行けばいいんだろうけど、何を隠そう、この会を企画したのは、お母さん自身だ。 私と孝太郎さんの結婚式は、私の地元ではなく、孝太郎さんの職場のある大阪で行うことになっている。 地元から遠く離れた大阪で行うことになるので、木田さんとお婆ちゃんに招待状を発送する前に、「大阪に来れそう?」って一応事前に参加の打診をした。 でも木田さんの身体的に長距離の移動は難しいとの理由で、木田さんとお婆ちゃんは、出席を断ってきた。 もちろんそれは建前で、立場的に高橋のお父さんとお母さんや私と孝太郎さんに気を使ったんだろう。 結婚式には、高橋のお爺ちゃんお婆ちゃんも来るし、お母さんの実家、利根のお爺ちゃんとお婆ちゃんも来る。 私と木田さんの関係を知ってる人だけじゃなくて、知らない人も披露宴にはやってくる。 披露宴の席次表になんて肩書きで木田さんとお婆ちゃんのことを記載するのか、確かに悩ましい。 私自身、“新婦の父”“新婦の祖母”と正直に書けばいいんじゃない?”って思ったりもしたけど、そういうモノではないと、孝太郎さんに窘められた。 それを見た人がどう思うか。 よく考えたら、お父さんや、高橋や利根のお爺ちゃんお婆ちゃんがいるのに、木田さん達を“新婦の父”“新婦の祖母”とするのもなあ…。 身内が皆“気にしない”と言ってくれたとしても、私達の関係を知らない他の参列者がどう思うかは、分からない。 かといって、木田さん達のことを単に“親族”、ましてや“知人”とするのも木田さん達に申し訳ない気もするし…。 木田さんは、自分達が参列することで私と孝太郎さんが悩むことを見越してたのかな。 お母さんの実家の利根家の皆さんも来るし、“自分たちは参列してはいけない…”、そう思ったんだと思う。 お母さんもそれが分かってるから、私が「木田さんは来れないって」と伝えた際、木田さんとお婆ちゃんのために、結婚報告会という名の“ミニ披露宴”を企画してくれた。 お母さんも分かってたんだ。 自分が言わなきゃ、お父さんも私もこんなこと言い出せないってことを。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加