第九章 知らぬは…

2/18
前へ
/210ページ
次へ
新婚旅行を終え、一人両親の住む自宅に帰った私。 大きなスーツケースを、なんとか二階の自室に引っ張りあげると、自分のベッドの上にバッタリと倒れ込んだ。 「疲れたなあ」 ため息混じりにボソッと呟いて枕に顔を埋める。 色々、疲れた。 “着いたよ”と孝太郎さんに連絡しようかと、スマホを取り出そうとしたけと、なんだかそれもめんどくさくなり、諦めた。 枕に顔を埋めたまま、ぼーっと考えてみた。 昨日の今頃はまだ、ニューカレドニアのヌメアという街にいた。 それが24時間後には、いつもの自宅のベッドの上にいるって、ある意味すごい。 私にとって新婚旅行は、実は初めての海外旅行。 孝太郎さんは、家族でハワイやグアム、サイパンは行ったことがあるってことだったので、孝太郎さんの希望でニューカレドニアに。 季節的にも、南半球なら11月は春から夏にかけてと、観光するにもちょうどいい季節。 私は昔から興味があったので、カンボジアのアンコールワットを推したんだけど、「せっかくだから遠くに行こう」と孝太郎さんに押し切られてしまった。 いや、ニューカレドニアも行ったら行ったで、良かったんだけどね。 でもほら、私泳げないから。 一応、水着は新調しましたよ。 プランのアクティビティでダイビングを選んだので、仕方なく。 とまあ、思い出話は、とりあえずさておき。 なぜ一人で実家に帰ってきたのかというと、ただ単に、まだ当面は孝太郎さんの通い婚だから…、と言うことではあるんだけど。 でもなんだか今日の最後は、お互い口もきかずにお別れしてしまった。 それは疲れだけじゃない。 いろんな行き違いやすれ違いが…。 これがかの有名な“成田離婚”ってやつ…?
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加